キャリア形成の考え方 ~未経験からのスキル、副業、終身雇用の崩壊~
どのようなスキルを身に付けて市場価値を上げていくのか、とても難しい問題です。
これが正解、というものはありませんが、何となくこのポイントについては抑えておいた方が良い、というものはあります。筆者のキャリア体験談を交えつつ、キャリア形成の考え方についてのちょっとした参考情報を提供したいと思います。
最初はどこに就職する?
就職活動をしている学生にとっては雲をつかむような話です。ここでは社会人になって15年経った筆者の今だからこそ出来るアドバイスをしたいと思います。
就職時点でやりたい仕事が明確になっている人は珍しい
学生が初めて仕事につくときに、最初からやりたい仕事が明確になっている人は珍しいです。学生時代に就職活動のための勉強や企業研究などを行って、「やりたい仕事はこれだ!」と言う方がいらっしゃるとは思います。ただこれは、そんな気分になっているだけです。
働いてみないとやりたい仕事はわからない
実際に働いたことがない状態で、本当にやりたい仕事が明確になるはずがありません。食べたことがないものの味を本で読んで理解している。これと同じ状態で、本当の意味で分かったとは言えないのです。まずはどんな仕事でも幅広くやってみる。そこから実際の仕事はこういうものなのだと学んでいくものだと思います。
やりたい仕事ことより、業界を選択した方が良い
したがって、最初に就職する会社はどこでも良いのかという質問に対してはNoとなります。将来の伸びしろ、キャリアを考えた場合、私がお薦めしたいのは成長市場にポジショニングする会社です。
成長市場の会社をお薦めする理由
ここでは最初に就職する会社として成長市場にポジショニングする会社がなぜお薦めなのかについて解説いたします。
成長市場とは?
成長市場とは現在は、ヘルスケア、メディカル、半導体、ロボ、スマホ、IoT、AIなどが該当します。これらの市場は他の停滞市場と違うポイントがあります。
- たくさんものが集まる。具体的には投資(お金)、人、アイデア、注目
- お客さんの母数が増加する
- 新しい会社が生まれ、比較的歴史の短い会社が多い
- 新しい技術が次々と生まれ変化が激しい ポジティブな仕事が多い
ポジティブな仕事が多い
成長市場の会社は上記のような特徴があるため、いかに新しいアイデアや技術で新しい商品を出していくか、先に市場を確保するかという仕事がメインになります。リストラや経費削減ばかりを行う会社とは正反対で、ポジティブな仕事に多くのリソースを投入しますので、自ずとそこで働く社員の仕事もポジティブな仕事が多くなります。また社内の雰囲気も元気な雰囲気の会社が多くなりますし、そうでなければ勝ち残っていけないということになります。
会社が大きくなる
市場が成長するということは、最低でも市場成長率と同じスピードで会社の売上が伸びていきます。売上が伸びると会社規模も拡大していきます。つまりキャリアのチャンスが拡大するという非常に魅力的な状態になります。給料も増えますし、福利厚生も拡充されていきます。
出世が早い
会社が拡大するということはポジションも増えるということです。任せられる仕事も早い段階から多くの権限を委譲され、達成するとすぐに課長や部長に昇格可能です。
衰退市場に身を置くことの辛さ
ここまでは成長市場の会社について説明してきましたが、衰退市場に身を置く会社の辛さはこういうポイントがあります。
- 売上が伸びないのでコスト削減、リストラがメインの仕事になる
- 新しい技術や人材が集まらない
- 株価が安い
未経験からのコンサル会社転職
ここでは未経験からコンサル会社へ転職した私の体験からアドバイスしたいと思います。
懐の深い会社を選ぶ
最初は誰でもその業界のスキルを持っていません。特にコンサルスキルは独学で身に付けることが難しく、仕事をしながら覚えるしかありません。そんな時、未経験者でも仕事に積極的にアサインして、育ててくれる懐の深い会社を選んだ方が良いです。中には使える人しか仕事にアサインしない会社もありますので注意が必要です。面接で質問すると答えてくれると思います。
最初はなんでもする姿勢で良い
無料でスキルをくれるのですから、こちらとしても雑用でもなんでもする姿勢で仕事に挑んだ方がいいです。最初から難しい大きな仕事を与えてくれることはあり得ません。どんな小さい仕事でも大事に実行することが大切です。その仕事を経験するうちに、スキルが身についていきます。
先輩を見て盗む
後は先輩やメンターとなってくれる人を見つけて積極的に質問して、スキルを盗んでいく姿勢が大切です。
これからの働き方
ここでは昨今の働き方に関するニュースや話題から、これからの働き方についてコメントしていきます。
複数のスキルを組み合わせることで希少な人材へ
元リクルート、元奈良市立一条高等学校校長の藤原和博さんが著書『10年後、君に仕事はあるのか? 未来を生きるための「雇われる力」』(ダイヤモンド社)で指摘しています。一つのスキルだけで食っていくプロ野球選手のような人は稀有な存在です。
例えばスキルの種類が100通りある場合、一つのスキルだけですと、100通りの中で上位に入らないと食っていけません。
しかし、三つのスキルを組み合わせると、100x100x100で1,000,000通りになります。これならば、競合がぐっと減って、その領域で上位に入ることが比較的簡単になります。
特にこれからは右肩上がりの経済成長が終わりました。特定の物を効率よく大量生産すればよい時代が終わり、いかにクリエイティブで珍しいけど世の中の人が求めているものを生み出すことが出来るかにシフトしています。
このような世の中においては、藤原さんが指摘されるような複数のスキルを組み合わせることでの希少性を生み出す考え方が必要になってくると思います。
終身雇用は終わった
2019年5月13日に日本最大の企業であるトヨタ自動車の社長が、「終身雇用守の難しい」とコメントしました。
世界でも超優良企業すら終身雇用を続けることが難しい世の中になっているのです。つまり、100%今後我々が所属する会社に終身雇用は無くなったと考えた方が良いでしょう。
私たちのキャリアパスも「大企業に就職して一つの会社に最後まで」というモデルはとっくに終わりました。
これからは自分の進みたいキャリア、そして世の状況、所属している会社の状況を見極めて、複数の会社を渡り歩くことで、安定で幸せな生活を送っていくことが必要です。少なくともそういった考え方をもって常に準備しておくことが必要です。
日本版401K
アメリカには401Kという企業年金制度があります。これは年金の積立金として一定額を給料から拠出するとそれに対して、会社から例えば50%分を加算してくれるというものです。年間の上限額が決まっています。
メリットはこの加算分と所得税控除です。この拠出分については税金がかかりません。さらに401Kは個人としての積立金として外部の金融機関に蓄積されますので、会社が変わっても積み立てた金額はキープできます。
この401Kの日本版が徐々に浸透しつつあります。既存の年金や退職金を運用してきた会社は、これまで積み立てた分を401K口座へ支払うことで移行しています。
401Kがあり、年金と退職金を401Kとして支給され、60歳の時に特に何もない会社が増えてきています。
この制度になっていれば、その会社にずっといるインセンティブは無くなりますし、会社としても人員の入れ替えをフレキシブルに行うことが出来ますので、Win-Winの関係です。
社員にとっては転職したとしても金銭的なデメリットが無くなります。
副業することで本業にプラスの影響
政府は副業・兼業を推進する環境整備を積極化させています。日本は高齢化社会が急激に進んでおり、日本経済の人手不足が深刻化しているためです。
これまでは会社員が副業を行うというイメージや選択肢すらありませんでした。会社員は会社の家族としてそのすべての時間を会社に費やす、そんな生き方が日本人の典型でした。
これが完全に変わりました。メインの仕事として会社に所属し時間を費やしますが、空いた時間で別の仕事をすることが可能になりました。
私もそうですが副業を行うと本業にプラスの影響もあります。
特に収入面で月に3万円でも本業にプラスでもらえると、遊びたいことに使うことができます。また精神的余裕が全然違います。
本業で仮にうまくいかなくても自分には副業というセーフティネットがあると考えることができます。この考え方はお金持ちが働いている状態に似ています。いつクビになっても生きていけると考えているので、ストレスのかかる仕事は断ることが出来ますし、無理をする必要がないので結果的に本業でもうまくいくことになります。
ただし、副業はやっていて楽しい仕事やストレスならない仕事、体に無理のない範囲で行うことが重要です。
プロ会社員として複数の会社を渡り歩く道
アメリカではこういった考え方が一般的です。日本の会社員にとって会社は生活の大部分を占め、自分の一部、家族的な側面があり、従属している意識が非常に強いです。
アメリカでは会社はただの器です。スキルと労働力を提供し対価を得ている単なる場所です。仕事が明確に分業されており、自分の担当する仕事以外の仕事は対応しません。自分の業務範囲外の仕事をする場合は給料が上がります。
仕事はこのように明確に分けられた範囲で行うか、プロジェクト単位で行うことがほとんどです。したがって会社という枠組みの意識が薄く、業務内容、、プロジェクト、一緒に働く人が意識されます。したがって会社を移ってもそれほど大きな違いが無くなります。
日本もアメリカ的な働き方に変わっていくと思います。自分は何をしてきたのか、何ができるのかを明確にしておき、会社はその内容について募集をかける。
会社という単位よりも、業務内容で複数の会社を渡り歩く中で市場価値を上げていく、こういったプロ会社員としての働き方が増えていくと思います。
まとめ
これまで就職する時の会社の選び方、市場の選び方、成長市場の会社のメリット、コンサル会社への就職とスキルの身に付け方、そして最新の働き方に関するトピックを基にこれからの働き方について説明してきました。
日本は失われた30年と言われますが、平成元年の世界時価総額TOP10企業に日本企業は8社入っていましたが、平成30年には0社、TOP30位にトヨタ自動車の一社だけ入っている状況です。
日本経済は大きく変わりましたし、働き方もこれからもっと変わっていきます。このような世の中をより前向きに生きていくための一つのアドバイスになれれば幸いです。
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